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とりあえずよろず。
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書きかけ、だったんだけどこれ以上どうにもならない気がして…;
ちゃんと仕上げるつもりで去年の夏の終わり(要するに1年前)からあたためていたのですが、方向性を見失いました。没ネタということで転がしておくことにしました。

とりあえずひたすらラヴェ姐さんが書きたかった気がします。IF設定資料みたいな感じでもあるような。


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音井家の主夫はオラトリオで、大黒柱はラヴェンダー。
適材適所と云うならば、これ以上の配置はない。

年嵩の者が年少者の面倒を見るのは道理に適ったことである。しかし、オラトリオがもしも弟達の面倒を一手に引き受けることに不満をもらせば、鋼鉄の大姉上はこう云うだろう。
曰く、
「私はもうお前を育てた」
それでも、ちびを育てるのは皆の仕事で、オラトリオが幼稚園に送り迎えしたりシグナルが着替えをさせたりする。他愛ない質問にパルスが生真面目に答えてやることも。
もちろんラヴェンダーが風呂に入れることもあり、長姉がタンクトップに短パンで扇風機前に胡座をかいてちびの髪を拭いてやっている姿なんてのも音井家では普通にみられる。纏め上げてピンで留めた洗い髪がほつれて首筋に打ち掛かる様と、血の色を浮かす唇と肌ばかりが女らしく、その他の全ては目眩がするほど男らしい。基本的に容姿に恵まれた音井家の紅一点は、華やかだが下手な男どもよりも逞しい。
そして大きな身体をまめまめしく動かして、そのうしろで食事の支度をするのがオラトリオの仕事だ。
「オラトリオ、ビールを寄こせ」
「夕食前です、ねーさん。空きっ腹にアルコールはお勧めできません」
「つまらん奴だな、相変わらず」
「つまらなくて結構!あとでお好きなつまみをつくりますから、今は我慢してください」
代わりに冷えた麦茶のグラスが手渡される。仕方ないなと呟いて、ラヴェンダーはそれを受け取った。
汗をかいたガラスに満たされたこげ茶色の液体は、火照った身体には十分に魅力的だ。僕も僕もとせがむちびにまずお茶を飲ませてやって、ぐいとラヴェンダーが力強くグラスをあおった。頤が挙がり白い咽喉もとが露わになるが、残念ながら見惚れるような命知らずは此処にはいない。
飲み干したグラスをオラトリオに返して、
「梅和えがいいな」
と告げる。
「長芋がありやす」
「よし、それだ」
「承りやした、と」
そんなわけで今夜のつまみは長芋の梅和えだ。一緒に若布を戻そうか海苔を焼こうかと考えながら足元のちびをオラトリオは呼んだ。
食卓はもうすぐにも整う。
「ちび、パルスを起こしてきてくれ。腹に飛び乗って起きんかったら氷をやるから一旦戻って来い」
はい!と元気いっぱいに返事をして、駆け出す前に、ちびがオラトリオを見上げて大きな眼をくるりと光らせる。
「ええと、う、うたけ…?」
「うけたまわりました、だ。ちび」
「うけたまわりましたー♪」
ゆっくりと繰り返してやると、ちびは新しく言葉を覚えた嬉しさに、きゃあきゃあと笑いながら駆けてゆく。それをオラトリオはひらりと片手を振って見送った。
料理の匂いを嗅ぎ付けて、にこにこしながら現れた三男に給仕を手伝わせ、三男の話す「日刊・本日のエララさん(命名はオラトリオだ)」を聞き流しながら、最後の盛り付けをしているとのっそりと次男が現れた。如何にも恨めしげな顔で片腕にちびを抱えている。
にやりと哂ったオラトリオにパルスが咬みつかんばかりに怒鳴る。
「よう、ダイブは効いたか?」
「やはり貴様の差し金かオラトリオ!」
「物理的不可能ナシに夕飯に来なかったヒトにはおにーさんのご飯は食べさせませーん。食いっぱぐれるよりマシだろ?感謝したまえ青少年♪」
ぐるぐると咽喉を鳴らしそうな勢いで喚く次男を、軽くいなして長兄はさあ座れ座れーと手を振った。音井家の食卓はいつも賑やかだ。


食事のあと暫くテレビを堪能したシグナルやパルスが自室に引っ込んで、リビングが静まれば大人の時間だ。
そのときどきでビールや日本酒を引っ張り出されては、ささやかな家族会議の開催となる。
「うむ、旨い」
「合格ですか、よかったです」
向かい合わせに座る長姉と長兄を、ちびが興味深そうに見守る。議題は大概、他愛ない世間話や家計の話、仕事の愚痴や…色々だ。年少組が回れ右で逃げ出す大人たちの小難しい話も、何故かちびは好んで聞きたがる。
首を突っ込みたがるのとは違い、邪魔もせず黙ってじっと座っている。変わった子供だからなのか、そんな子供だから変わっているのか。どちらでもいいけれど、あいつはきっと将来大物になるな、と長姉と長兄は本当に二人きりのとき生真面目な顔で語り合ったことがある。
昼間のアルコール同様、音井家では夜半にジュースを飲むのは禁止しているので、ちびが飲むのは麦茶と決まっている。大人が飲むのを真似してビールや日本酒を欲しがったこともあったが、一度味わってみてからは騒がない(訂正、欲しがらなくなった代わりに「味が壊れています!」と別方面で騒いだ)。
つまみは結構ちびの口に合うらしいが、パルスやシグナルはそうでもない。青少年らしい食欲を普段遺憾なく発揮する二人は、つまみに余り関心がないのだ。シグナルは全くの下戸で、パルスは付き合いなら軽いカクテルの1~2杯が飲める程度。ちびの20年後が怖いな、とオラトリオはこっそり笑う。
「だいぶ涼しくなってきたな」
「ぬる燗が恋しくなりますねぇ」
「まったくだ」
虫の音がする夜が更ける。
夏が終わる。


「今年は海とか行かなかったですねぇ」
「私もお前達も忙しかったからな。もう少し涼しくなったら温泉でも行くか」
「お、いいですね~♪ついでに紅葉狩りといきますか」
「オラクルにも声をかけておけ」
「承知!」
「ぼやぼやしてるとカシオペアの方に持って行かれるからな。早めに計画立てろよ」
「はいはい…ってねーさんそんな物みたいな…」
「何か?」
「やー、何でもないっすー」



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