とりあえずよろず。
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わたしかーらー、あなたへー♪ということで青藍忍さんに捧げます「violet beauty」。全力で悩ませて頂きましたが、如何でしょうか。よろしければ、どうぞお納めくださいませ。
場面的に<暗黒母神>の事件直後の夜を想定しています。主役はじいちゃんということで(教授大好きです)。ほのぼの…とは少し違う仕上がりになった気がしますが; あ、ちょっと調べたのですけれど、紫には「信頼」という意味があるようです。「献身」というのもあるのようだけど、「信頼」の方がいいなぁ…と思いながら書きました。すみません夢見がちで。すみません酸素基本の思考してて(笑) そして本当に申し訳ありませんが、私はこれからこんぴーたーのない世界に旅立ちます。企画、終わらせたかったけど無理でした…。これひとつ完成させるので精一杯でした。あとで少し直すかもしれませんが; しばらくの間確認できるのは掲示板のみとなります。それ以外は帰還後にしか確認できません。今すぐ貴様に物申す!という方はどうぞBBSをご利用ください。 それではまた!! ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ シンクタンク・アトランダムともなれば、どんなに遅い時刻になっても灯りの消えない研究室のひとつやふたつはある。 ほんの数時間前までさながら戦場のようであったその一室にも、やはり疲れた顔の男が一人、居残ってた。 僅かな灯りだけを残した薄暗い部屋に、ぼんやりと光を投げかけているモニターへと、男は声をかけた。気遣うように、ぎこちなく笑みを浮かべる。 「あー…調子はどうかね?…オラクル」 尋ねれば、モニターに映された青年が穏やかな笑みを浮かべて応える。 「はい、今はとてもいいです。教授」 ありがとうございます、と軽く礼をする仕草に品がある。その挙措を目にする度に、音井信之助はさすがカシオペア博士のプログラムだな、と感嘆の念を覚える。 そう、彼はプログラムだ。それも、世界の叡智を集結させた電脳の図書館、<ORACLE>のネット・コントロール・プログラム。その存在を何よりも雄弁に語るのは、完璧な左右対称に整った顔立ちでも日の光を知らない白い肌でもない。その髪と瞳、纏う衣装の色合い…この世ならざる―――人工の生命にしか持ち得ない、そのゆるやかに移り変わる雑音の色だ。 「今回は…お前さんも、大変だったな」 「いいえ、私は…」 云うな、というように教授が片手を挙げ、それを受けてオラクルが口を噤んだ。自分のことなどどうということもないと、続く台詞の内容なら予想がつく。信之助は、オラクルについてより多く知る者の一人だ。だから、彼のトラウマも、今回の件で受けただろう不安や恐怖も想像することができる。聞いていられる台詞ではない。 言葉を捜しあぐねて白い顔が俯く。はらり、と細い髪が落ちて頬にかかった。現実感の薄いCGの印象と、どこまでも生きているような細やかな一瞬が交差して、ヒトならざる色を映してさえオラクルがプログラムであることを信之助は時折忘れそうになる。まるで、ただディスプレイ越しに友人と話しているような。 「オラトリオは、どうしていますか?」 話題を変えるようにして、その実一番問いかけたかったことなのだろう。遠慮がちに口を開いたオラクルが、不安げに雑音がちらつかせた。 「あの子は、今は眠っとるよ。本格的な調整はまだじゃが…大丈夫。明日には電脳空間に戻せるよ」 本当の事を云えば、しばらく電脳空間に置いておくしかないのだが、それは云わずにおくことにした。部屋の中央に設えられた簡素な調整台には、大柄なHFRがケーブルに繋がれて横たわっている。怒鳴りつけてようやく調整台についたそのHFRは、音井信之助の最新作で銘をオラトリオという。ヒートストレスを起こし、倒れたばかりのオラクルの相棒。 細心の注意は払ったはずだ。だが、ヒトに対する対応の柔軟さから、抜きん出た優秀さからその重圧を甘く見ていた。むしろその優秀さゆえに、ヒトに対してストレスを隠し通すことができたのだとも云うことができるだろう。 信頼と呼ぶことは容易い。それでも研究者達は口惜しさに唇を噛んだ。そのストレスを見過ごしてしまったこと。見抜いては、やれなかったことに。 …けれど。調整台のオラトリオは今は本当にただ眠っているように見える。前は、うなされているようだとすら感じた姿。バランスを崩して苦しいはずなのに、閉じられた瞼が以前よりずっと穏やかになったように見えるのは気のせいなのだろうか。 「<ORACLE>で茶を飲んできました」 何度も呼びかけてようやっと電脳空間から戻ってきた、傷付いたロボットプログラムの第一声はそれだった。へらりと笑う、その気負いのなさに表面上渋面を作りながらも研究者たちは一様に胸を撫で下ろした。彼らは―――<ORACLE>は、当面の危機を乗り越えたのだと。 無茶な仕事の仕方を叱り飛ばしながらも、一番若い息子への誇らしさが胸のうちに湧き上がるのを抑えられなかった。その芯の強さは、造ろうと思っても造れるものではない。プログラムされたものではない、それは彼自身が獲得した「生きた」個性。 同時に、その強さゆえに必要とあらば今回のような無茶を何度でも繰り返すだろうという危惧も感じていた。ヒトには、それをとめることは出来ないだろうということも。 オラトリオは、彼をぎりぎりと縛り上げていた何かを、研究員たちの――――“人間”たちの与り知らぬ場所で乗り越えてきたのだろう。それを喜ばしいと思う気持ちとともに、少しばかりの淋しさもある。多分それは、「親心」と呼ばれる心情なのだろう。 ヒトであれ、ロボットであれ、「子供たち」はいつもそうだ。齟齬をきたしていた歯車がかちりと噛み合うように、ある時ふと一足飛びに成長してしまう。周囲がいくらやきもきしても無駄なことが多い。 それらを感じるたび、何と…愛しいものかと思うのだ。 「信じてもらえんかもしれんが」 そう、教授は前置きをした。 「わしは…わしらは、本当にお前さんたちを可愛く思っておるよ」 オラクルが笑う。 「知っています、教授。私も、そして多分オラトリオも」 ふわり、と彼のまとう雑音が柔らかく変化する。溢れだし、滲む。 「私に、オラトリオをありがとうございます」 淡い紅に薄い蒼が交じり合うあたたかな菫の色。 目を見張るほどに美しい、光の滲むその色。 晴れやかにオラクルが笑う。 「私達に…半身を、ありがとうございます」 これまでよりも格段に生彩の増した鮮やかな笑みに、彼もまた急激な「成長」を経ているのだと知る。 傷付くばかりだったプログラム。穏やかに微笑みながら、CGはいつもどこか儚さを帯びていた。 重い枷を嵌められ、システムダウンを繰り返し、けれど何度でも立ち上がり続けた姿は、オラトリオと似ていたことにやっと気付く。 動き出したばかりの<ORACLE>の前途は多難だと云い切っていい。オラトリオに与えた最強の冠がいつまで続くのかもしれない。再びヒートストレスに倒れるようなことがあるのかもしれない。確かなことなど何もない。 けれど。きっと、大丈夫だろうと思えた。 「わしの方こそ…ありがとう、オラクル」 オラクルの言葉に、笑顔に、どこか救われたような思いを抱くのはやはりヒトが弱いからだろうか。弱い自分達を、よく似た弱さと眩しいほどの強さを秘めた彼等は、許してくれるのだろうか。 …これだから、研究者を辞められないのだ。自分の道を歩き始めた彼等に、次々と誕生するロボット達に、自分達がしてやれることなど一つしかないではないか。 音井信之介にとって人生の喜びも、苦しみも、ロボット工学とともにあると云っていい。若い頃も、今も、そしてきっとこれからも。 製作者の手を離れたロボット達の行く末を見守っていたい。最高のメンテナンスをしてやりたい。出来る限りのサポートを与えてやりたい。より多くの幸福を…その「生」の中で見出して欲しい。 それらの欲求は尽きることを知らないから。 儀礼的におやすみを云い合って、少しばかりの睡眠をとるために仮眠室へと向かう頃には、うっすらと夜が白んでいた。 窓越しに見る東の空が懐かしいような色に染まっていて、そうしてやっと気付く。今しがたオラクルが見せたあの色は、そうか夜明けの色だったのか、と。 PR ![]() ![]() |
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